学芸員という生き物について

博物館で生業を立ててる人のはなし。

放り込まれたものをこなすために

アイデアのつくり方

学芸員として仕事をしていると、突然「この期間がもろもろの事情があって空欄になってしまった」もしくは「間を埋めるミニ展覧会が必要だ」なんてのがありがち。

いや、大きなところは別よ?ちゃんと年間スケジュールがカッチリ決まっていて、その前後でもやる内容とか決まっているとか。

そういう場所に勤めてみたかったわ…。

そうなんだよね、わたしはそういうカッチリしたところで働けなかった。むしろ、「一応年間好スケジュールは決まってるけどまあざっくりしてるからあれこれできる」的な、小さな博物館で働いていたので、突然上から前述の話が振られる場合もある。

要するに「間を埋めるような企画何か無い?」である。無茶振りにも程があるが、しかし追いこまれると猫を噛むより猫と遊ぶタイプなので、そんな無茶振りを楽しみつつえいやあと片付けることをやってきた。

無茶振りに対応するために必要なことは、常にネタを探しておくこととしか言いようがない。

ネタ帳的なものを作ってはそこにストックしておく。わたしの場合は、ネタ帳としつつ仕事上のメモ帳も兼ねるようになってきたのでいい加減分けなきゃならないのだが、一方で仕事上のメモからネタを思いつくこともあるので結構難しい問題である。

さておき。ネタ帳の内容は本当に簡単なモノで、見た展覧会とか行った博物館の展示とかそういうので気になったものをメモする程度。展覧会だけじゃなくて、自分とこの収蔵資料を見て気づいたこととか、そういうのを思いついた瞬間に書き付けている。だからアナログの方がこれは良いのかもしれない。

データ整理しやすいのはデジタルだが、整理する必要が無いノートなのでそのまま書いていくのが大事。んである時ふと振り返って見返してみると、意外なところ同士が結びつきそうだとか、次のネタこういうのできそうじゃね?みたいなのが何となく出てくるというか。その繰り返しである。

だからいろんな博物館美術館に行っていろんな展覧会を見て引き出しを強化していくことが大事なんだけど、年を経るごとにその時間が取れなくなるから厄介だ。子どもがいれば子どもをダシにしてどこそこへ出かける、みたいなことができるが(子ども本人はどう思うだろうか)、いない現状では妻が付いてこようとするからこれはこれでまた別の問題にある。鑑賞スタイルが異なるから大変。どちらかにあわせる必要は無いとわたしは思うんだけど、妻の方はあわせてほしいみたいで、結局自分のペースで見られなかったりする。

一枚の絵の前で数十分立って見ていたい人間なんだよわたしは。

ともかく、そうやっていつ使えるか分からないけど多分いつか使う的なストックを増やしておくのが大事で、多分それは他の仕事も一緒だと思う。過去の自分のやったことの記録とかどんなことが話題になってるかとかそういうのを収集して記録する。なんかねーそういうのをやっちゃうね。

職業柄てやつなのかもしれない。

んで、こないだのことだけど冒頭のような話が降ってきて、さあどうしよう時間は限られてるぞーと思いながらノートと他の資料を眺めながら考えてたら、やっぱり降りてくるもんだ。ラフのラフみたいなものがなんとなくできてしまった。所要時間約30分。誇張したところあるけど、でも1時間以内に方向性はできたし、そこから広がる「オプション」まで何とか考えついたので上々だろう。自画自賛しすぎか。取りあえずそのラフをざっくりした形にして先方に返したら「それでいこう」という話になった。何事もストックをしておくのが大事だわと再認識した。

ただ、今回は何とかこれで乗り切れたけど、次回以降がどうなのか保障はない。できないときはできないし。