学芸員という生き物について

博物館で生業を立ててる人のはなし。

アンケート集計作業もやってるんですよ、実は

アンケート調査入門―失敗しない顧客情報の読み方・まとめ方―

経験上、アンケートは集計フォーマットも同時に作らないと話にならない。

人数がいない博物館・美術館の場合、展覧会アンケートの集計なんかもが学芸員がしなきゃならないケースってのがある。というか、ほとんどそうなんじゃないかな?なのでExcelのスキルはある程度必要だったりする。あと関数とかそういうのも知ってた方が何かと便利。

というのはさておき。集計作業は「お前の担当展なんだからお前がやれよ」的圧力でやることが多い。つまり基本的にひとりの作業。半分くらい手伝ってくれても良いのに、なんて愚痴りたくなるが、それはそれでややこしいことになりそうなので黙って入力作業を進めている。

このアンケートってやつは、本当に設問を考えないと人によってはとんでもない回答をしてきて集計するときに困ってしまう。例えばこんなの。

 

■あなたはこの展覧会にどうやってきましたか?当てはまるものに○を付けてください。

a)徒歩 b)電車 c)自家用車 d)バス e)自転車 f)そのほか

 

 

あるあるの質問なんだけど、回答する側としてはどう○を付けたら良いか分からない。

例えば、自宅から会場までクルマで来た、というのなら問題無くcに○を付ければいいだろう。自転車も同様。ここで問題になるのは、複数の交通手段を用いた場合である。

すなわち、

・駅まで徒歩で行って電車に乗って最寄り駅についてそこからは徒歩

・バスターミナルまで自転車で行ってそこでバスに乗り換えて最寄りバス停から徒歩

・自転車で駅まで行って電車に乗り換えて駅から自転車(自転車を乗せた)

などなど…現実はもう少し複雑でややこしいのだが、分かりやすく書いてみた。

集計する側は「最も長い時間乗った(使った)手段」を想定しているのに、回答側は素直にこれまでのルートで使った手段を答えてくる。複数回答なので当然ながらアンケート枚数と回答数があわなくなる。報告を上げたときにそこをつつかれる。

という、なんのためにアンケート集計してんだろっていう問題があったりするのだ。ああ思い出しただけでお腹が痛くなってくる。

以前勤めていたところでは上記問題が発生して結構大変だった。設問自体を修正しようにも、これまで使ってきた項目だから変えるに変えられない。過去のデータと比較できなくなるから、というので、それもそれで大変なのである。おまけに2000件とか入力していかなきゃならないから一箇所だけ妙に数値が膨らむと余計に目立ったりするわけで。毎回毎回頭を抱えながら同僚と話したことを思い出すわ。

アンケートを作る時は「どういう回答が欲しいか」を事前によく考えておかないと意味が無いし、集計にも手間がかかって時間が無駄になるわけで。集計フォーマットも同時に作っておいて、運用面のシミュレーションをしながらじゃないと意味が無い。無いんだけど、そういう時間も無いんだよね展覧会の前って。じゃあ半年前くらいにやれよって話だけど、それはそれでもう展覧会の準備に動いてるのでできそうでできないのよ。

ほんと、こういうのって最初が肝心なんだけどな…

愚痴りながら今日も入力作業。以前いたところに比べて数は少ないけどやっぱり複数の箇所は面倒くさい。スキャンして自動的に集計してくれる機械があれば一番いいのに。

学芸員って、こういうこともやってんです。