学芸員という生き物について

博物館で生業を立ててる人のはなし。

博物館実習に行く大学生・大学院生のみなさんへ

博物館実習ガイドブック

夏休みに入って、博物館実習として各博物館美術館へいく、大学生・大学生の皆さん。

きっと大勢いらっしゃることでしょう。中にはすごく楽しみにしている方もいらっしゃるかと思います。

今回はそんな皆様に、知っておいてもらいたいことを書きたいと思います。

1.時間厳守でお願いします

学芸員って変な生き物なんですが、ここでも書いてますがとにかく時間がない。何かこざこざとした仕事とか、打合せとかそういうのが入ってます。暇なときはあんまりないと思っていてください。暇なときは暇なのですが、あんまりそういうのはないです。何か動いている。なので何時から始まる、てのとかそういうときはその前の時間に来て準備しておいて下さい。個人的に話を聞きたいときとかも、事前にアポを入れておいてください。

2.身だしなみ

学芸員のイメージってたぶん「変な格好してる、強烈な個性的格好の人が多い」というものが多いと思うんですが、館によりけりですけどそれなりにちゃんとした格好をしています。なので好きな格好してもまあ大丈夫だろと思って現地に行くと痛い目にあったりしますので要注意です。

何より実習生は「お客さん」じゃなくて「期間限定のスタッフのひとり」として扱うところがほとんどなので、学生として大目に見てくれないことも多いです。

あと資料や作品を傷つけない、ていうのが大前提なので、

・シャツは裾をズボンにインする

・ネックレスや指輪、ブレスレットをしない

・ネイルや化粧もなるべくしない

・ヒゲをきちんと剃る、長い髪の毛はまとめる

・ヒールを履かない、滑りにくいスニーカーを履く

とまあこんな具合でしょうか。他にも細かい注意点がありますが、実習に行く館の担当者からガイダンス等の説明があるかと思いますので、それに従ってください。

この『博物館実習ガイドブック』にはコンパクトにまとめられているので、それを参考にするのもいいと思います。

博物館実習ガイドブック

博物館実習ガイドブック

  • 作者:田中梨枝子
  • 京都造形芸術大学 東北芸術工科大学 出版局 藝術学舎
Amazon

3.指示に従いましょう

まーこの辺はいろんなところで言われてるので当たり前なんだろうけど、実習先の博物館・美術館の担当者の指示をよく聞いて、それに従いましょう。おそらく博物館実習の講義等で博物館資料の取り扱いについて学んでいるかと思います。

しかし、博物館・美術館によってはそのやり方とは異なるやり方を持って資料の扱いをしている場合もあります。資料管理の方法や取り扱いについては、実習先の館の学芸員や職員の指示に従ってください。「教科書でこう書いてあった」「授業でこう習った」と思うことはあるかと思います。実をいうと、教科書や授業で習うことはあくまでも一般的なことであって、各所によって細かい運用ルールがあるのが実情です。それは長い年月の間に、資料を守る・丁寧に扱うために構築されてきたものなのです。なので、勝手にやり方や手順をを変えたりせず、必ず指示に従ってください。

4.いろいろな方に挨拶しましょう

学芸員というと、資料と相対して研究をしていくんだ、展示を作っていくんだと思われる方も多いでしょう。なので入館者と関係する場面は無い、研究と展示だけやっていればいい、自分たちは実習生で関係ないと思われる方も多いかと思います。

先に言っておきますが、そういう考えは大間違いです。実習生だから多めに見てもらえる、という甘い考えは実習先に行く前に捨てた方が良いです。実習先は実習生と見つつ、博物館・美術館のスタッフの一員として見ます。入館者も同じことです。愛想無く、挨拶もせずにいたらどうなるか、どう見られるか。このあたりはよく考えましょう。

また、もし仮に今後博物館・美術館に勤める事があった場合、勤め先は大都市圏だけとは限りません。地方の小さな館かもしれません。学芸員ひとりであれもこれもしていかなければならないこともあり得ます。お客さんと直に触れあうこともあるでしょう。そのときのことも考えると、いろいろな方に挨拶するのが良いでしょう。

博物館・美術館は学芸員だけで動いているものではありません。様々な人に支えられて動いています。そのことを理解して実習に臨みましょう。

5.分からなかったら取りあえず止まる→必ず質問する

何事もそうですが、指示を聞いて分からないことがあったら、気になることがあったら必ずメモを取りながら質問しましょう。メモは大事です。また、作業中の場合は作業を必ず一度中断しましょう。手に資料や作品を持ってる場合は動かない場所へ移動してから話を聞きに行きましょう。

実習生だから分からないことだらけなのは当然ですし、実習先の方もそう思っています。そこで勝手に動かれて資料や作品に万一のことがあったら大変です。「指示に従う」でも書きましたけれど、資料や作品を安全に守ることにも繋がりますし、自分たちの命を守ることにも繋がります。

とにかく、どんな些細なことでも分からなかったら聞きに行く、という態度を徹底してください。

最後に

ここまで堅苦しいことばかり書きましたが、実習は楽しい反面大変なことばかりかと思います。きっと勉強になることが多くて毎日疲れるでしょう。体調だけには十分に注意して、がんばってくださいね。